食べる桜の起源

  • 桜花桜茶

    江戸では、見合い・結納・婚礼などの一生を決める祝いの席では、その場だけ取り繕ってごまかす意味の「茶を濁す」ことからお茶を用いませんでした。 代わりに花が開く「桜湯(桜茶)」を用いました。
    (上方では昆布茶を用いていました)

    桜茶の写真
  • 桜花桜あんぱん

    あんぱんは、文明開化の先人・銀座木村屋の創業者・木村安兵衛が、饅頭の製法を元に酒種を用いて、苦心の末、作り上げ、明治7年(1875年)銀座に開店した時から売り出されました。
    翌明治8年4月4日、東京向島の水戸藩下屋敷にお花見のため行幸された明治天皇に献上するため、酒種あんぱんのへそに桜花漬を埋め込みました。

    銀座 木村屋總本店
    桜あんぱんの写真
  • 桜葉桜餅

    享保二年(1717年)江戸向島・長命寺の門番・山本新六が、八代将軍・吉宗が整備した桜名所・隅田川土手の桜の葉を樽の中に塩漬けにした桜餅を考案し、門前で売り始めました。花見の人々に喜ばれ名物となり、その味は平成の今も変わらず受け継がれています。
    この桜餅は小麦粉の焼皮で餡玉を巻いたものですが、京の都に桜餅が伝わった時には、道明寺製の椿餅の椿の葉が、桜葉漬に変わったものになっていました。現在も、関東風と関西風で2種類の桜餅が見られるのはこのためです。

    向島 長命寺 桜もち
    桜餅の写真

桜の花にも香りがある!

  • 桜の花には香り(匂い)がないと
    誤解している人が多いよう

    桜の香りイコール桜餅の香り、即ち、桜葉漬の香りを連想する人が多いのも確かですが、実は、すべての桜の花に香りがあります。とは言え、もっとも多く植えられている「ソメイヨシノ」を始めとする大半の桜の香りはとても弱く、花に顔を近づけても感じられるかどうかという程度なのも事実です。

  • 特に香り高い里桜は
    「匂い桜」と呼ばれている

    ごく繊細な香りの桜の中で、オオシマザクラやヤマザクラの系統の桜には芳香があり、それらの交配で生まれた特に香り高い里桜(栽培種の総称)は「匂い桜」と呼ばれています。匂い桜はソメイヨシノの出現まで大切に扱われ、「御所匂い」「八重匂い」「千里香」などの銘がつけられて、中でも「駿河台匂い(スルガダイニオイ)」は代表的な品種です。江戸時代、江戸城下駿河台の庭園に咲いていたので名付けられ、純白の一重咲きの可憐な花で、気品と清涼感がある女性的な香りは、ヒヤシンスにも似ていると言われています。明治以降の近代化の中で一度は姿を消したこのスルガダイニオイは住民の努力で、現在の東京都千代田区駿河台に桜並木として復活したそうです。名古屋では東山公園の「桜の回廊」に植えられています。

  • 桜の花の芳香成分の分析

    ベンズアルデヒド、β−フェニルエチルアルコール、アニスアルデヒド、クマリンなどが検出されます。ベンズアルデヒドはアーモンドやバニラなどに含まれる杏仁豆腐のような甘い香り、β−フェニルエチルアルコールはバラの主成分で甘くて深い優雅な香り、アニスアルデヒドはスパイスのアニスやフェンネルなどに含まれるベニスアルデヒドよりマイルドな甘い香り、そして、クマリンは桜葉漬の香りです。品種によって含有割合に違いがありますが、これらが微妙に混ざり合った甘い香り、それが桜花の香り(匂い)なのです。

  • すぐに香りを体験出来る方法

    桜花漬にお湯を注いでください。湯気とともに立ち昇る上品な甘い香り、これこそが桜花の香り(匂い)です。桜花漬の原料である八重桜・関山(カンザン)はオオシマザクラ系の里桜で、咲いたばかりの花に近づいてみると桜湯と同じ様な香りがします。また、大島桜ならば桜葉漬に良く似た香りです。

「桜」の語源

数多くの説が唱えられていますが、ここでは代表的な説3つを紹介しましょう。

  • 第1の説

    古事記や日本書紀に登場する神話の美しい娘「木花開耶姫(このはなさくやびめ)」の「さくや」が「桜」に転化したものだという説です。「木花開耶姫」は霞に乗って富士山の上空へ飛び、そこから花の種を蒔いたと言われています。そして、富士山そのものをご神体とした富士山本宮浅間大社(静岡県富士宮市)は、全国で千以上に及ぶ浅間神社の総本社で、木花開耶姫を祭神としています。

  • 第2の説

    さくらの「さ」は「サ神様」(主に田の神様)の意味で、「くら」は神様の居場所「御座」(みくら)を意味するという説です。田の神が桜の花びらに宿り、田に下りて稲作を守護するというのです。稲作りの始まりと桜の咲く時期が同じころなので、満開に咲く花の下で豊作を願ったのだと言われています。

  • 第3の説

    「咲く」に、「達」という意味の接尾語「ら」が加わったというものです。
    群れて咲く桜は古来より、咲く花の代表であったことをあらわしていると言われています。

「桜」の種類

 私たちが一般に「桜」と言っている「見る桜」は分類学上、バラ科サクラ亜科サクラ属サクラ亜属サクラ節の落葉高木です。サクラ属はサクラ、ウワミズザクラ、スモモ、モモ、ウメ、ニワウメの6亜属に分けられます。「杏」や「プルーン」はスモモ亜属、「桃」や「アーモンド」はモモ亜属、「梅」はウメ亜属で、近い親戚関係に当たる訳です。また、「食べる桜」である「サクランボ(桜桃)」はサクラ亜属セイヨウミザクラ節と極めて近い兄弟関係で、英語では「サクラ」を「Cherry Blossom(サクランボの花)」というのはご存知の通りです。

八重桜の写真
八重桜
大島桜の写真
大島桜

野生の「桜」の原産地はヒマラヤとされ、ミャンマー北部、中国の雲南省から東南沿岸部、台湾、日本列島、朝鮮半島や千島列島の南部にかけて分布しています。中でも気象条件が適したせいか日本では極めて品種が多くなり、自生種がヤマザクラ、オオヤマザクラ、オオシマザクラ、エドヒガン、マメザクラ、カスミザクラなど9種類、これらの突然変異や自然交雑の派生の自生種が100種以上といわれています。また、一般的に里桜(サトザクラ)と呼ばれる園芸品種(栽培種)は、古くは平安時代から自然交雑したものを人の手で育成して生まれた様です。江戸時代からは、人工的に交配させて新しい品種を生み出すことも盛んになり、飛躍的に品種が多くなりました。現代もなお盛んに作出されていて、今ではなんと300種類以上となっています。このように桜の品種は今後まだまだ増えそうです。

「染井吉野」の真実!

日本中で植えられている桜の約8割は、皆さんが良く知っている染井吉野(ソメイヨシノ)と言われています。
しかし、歴史上もっとも有名なお花見・豊臣秀吉の「醍醐の花見」の桜も、様々な時代劇の春のシーンを彩る桜も、 実は染井吉野ではありません。染井吉野は歴史的には新しい園芸品種だからです。染井吉野は、江戸時代末期、 園芸の盛んだった江戸の郊外・染井村(現在の東京都豊島区駒込辺り)の植木屋で売り出され、明治以降になって広まったのです。
お馴染みのソメイヨシノ(染井吉野)は、エドヒガン(江戸彼岸)とオオシマザクラ(大島桜)の交配種です。
葉が出る前にピンクの花が咲き揃う特徴をエドヒガンから、大輪で花付きの良さをオオシマザクラから受け継ぎました。
その植木屋は、この桜を江戸にいながら奈良吉野の桜がみられると称して「吉野桜」と名付けて売り出し、人気を博したと言います。
本当の吉野の桜は、花が新葉と共に咲く「ヤマザクラ(山桜)」なのです。全く系統も異なる桜に、古来名高い「吉野」ブランドをつけた訳です。
交通手段は徒歩しかなく、写真もない当時のこと、江戸の人々は、日本一の桜名所・吉野の名は知っていても本物の吉野の桜を知る人は少なく、 見慣れた「エドヒガン(江戸彼岸)」よりも、大輪で花付きが多く見栄えがするので、「吉野」というネーミングも相まって、大当たりしたのです。
江戸時代も現代も、ブランドやネーミングが大きな効果を発揮するのですね。

日本三大桜

  • 山高神代桜

    南アルプスと八ヶ岳を望む実相寺境内にそびえる根回り18.5mもあるエドヒガンの老巨木。幹の上部は朽ち果てているが根元近くから新たな枝を張り薄紅の美しい花を咲かせている生命力は神々しい。倭武尊(ヤマトタケル)の東征時に植えたと伝説がある樹齢1800年余と推定される日本最古の桜。

    山高神代桜の写真
    (山梨県北杜市武川)
  • 根尾の淡墨桜

    宇野千代の小説「薄墨の桜」でも有名な、東西南北に約30mも枝を張るエドヒガンの巨樹。継体天皇お手植え伝説が残り、樹齢1500年とも言われている。薄紅の蕾から白い気品のある花を咲かせ、やがて散り際には薄墨に色を変えることから名付けられた。

    根尾の淡墨桜の写真
    (岐阜県本巣市根尾)
  • 三春の滝桜

    樹齢1000年以上と言われるエドヒガンの変種、日本最古最大の枝垂桜。樹高12mの高さから幾重にも枝を垂らして咲く姿は、なだれ落ちる雄大な滝の様に壮大。

    三春の滝桜の写真
    (福島県三春町)

日本三大桜名所

  • 吉野山

    「古今集」の昔から詩歌に詠われた日本一・日本最古の桜名所。
    シロヤマザクラを中心に約200種3万本もの桜の花が、「一目千本」とも言われ、山上に向かって下千本・中千本・上千本・奥千本へと、1ヶ月をかけて豪華絢爛に咲き乱れる。

    吉野山の写真
    (奈良県吉野郡吉野町)
  • 弘前公園(弘前城)

    天守閣とお堀端一帯に、ソメイヨシノを中心に枝垂桜や八重桜など約50種2600本の桜が咲き誇る。樹齢130年の日本最古のソメイヨシノが大事に育てられている。(一般的にソメイヨシノの寿命は5〜60年と言われている)

    弘前公園(弘前城)の写真
    (青森県弘前市)
  • 高遠城址公園

    県の天然記念物に指定されている固有種・高遠小彼岸桜が約1500本、中央・南の二つのアルプスを背景に、小振りでやや濃いめの可憐な花が城址を埋め尽くすように咲き、「天下第一の桜」と称されている。

    高遠城址公園の写真
    (長野県伊那市高遠町)

さくら名所100選

 平成2年(1990年)に、財団法人「日本さくらの会」が日本を代表する特色のある優れたさくら名所100箇所を選定し、顕彰し、名所の保存、育成に努めているものです。なお、日本さくらの会は、昭和39年(1964年)東京オリンピック開催の年に日本の花「さくら」の愛護、保存、育成、普及等を目的に、初代会長 船田 中 衆議院議長を中心として超党派の国会議員有志により設立されました。