桜の花にも香りがある!

桜の花には香り(匂い)がないと誤解している人が多いようです。そして、桜の香りイコール桜餅の香り、即ち、桜葉漬の香りを連想する人が多いのも確かですが、実は、すべての桜の花に香りがあります。とは言え、もっとも多く植えられている「ソメイヨシノ」を始めとする大半の桜の香りはとても弱く、花に顔を近づけても感じられるかどうかという程度なのも事実です。

ごく繊細な香りの桜の中で、オオシマザクラやヤマザクラの系統の桜には芳香があり、それらの交配で生まれた特に香り高い里桜(栽培種の総称)は「匂い桜」と呼ばれています。匂い桜はソメイヨシノの出現まで大切に扱われ、「御所匂い」「八重匂い」「千里香」などの銘がつけられて、中でも「駿河台匂い(スルガダイニオイ)」は代表的な品種です。江戸時代、江戸城下駿河台の庭園に咲いていたので名付けられ、純白の一重咲きの可憐な花で、気品と清涼感がある女性的な香りは、ヒヤシンスにも似ていると言われています。明治以降の近代化の中で一度は姿を消したこのスルガダイニオイは住民の努力で、現在の東京都千代田区駿河台に桜並木として復活したそうです。名古屋では東山公園の「桜の回廊」に植えられています。

桜の花の芳香成分は分析すると、ベンズアルデヒド、β−フェニルエチルアルコール、アニスアルデヒド、クマリンなどが検出されます。ベンズアルデヒドはアーモンドやバニラなどに含まれる杏仁豆腐のような甘い香り、β−フェニルエチルアルコールはバラの主成分で甘くて深い優雅な香り、アニスアルデヒドはスパイスのアニスやフェンネルなどに含まれるベニスアルデヒドよりマイルドな甘い香り、そして、クマリンは桜葉漬の香りです。品種によって含有割合に違いがありますが、これらが微妙に混ざり合った甘い香り、それが桜花の香り(匂い)なのです。

文字だけでは具体的にはわかりませんが、すぐに体験できる方法があります。桜花漬にお湯を注いでください。湯気とともに立ち昇る上品な甘い香り、これこそが桜花の香り(匂い)です。桜花漬の原料である八重桜・関山(カンザン)はオオシマザクラ系の里桜で、咲いたばかりの花に近づいてみると桜湯と同じ様な香りがします。また、大島桜ならば桜葉漬に良く似た香りです。

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